PART XI   MOSFETアンプに挑戦!!

    お寺で聴くならZENの音!?

 前項のJLH Class-A アンプが完成したちょうどその頃、「手作りアンプの会」恒例の年末の「お寺大会」の課題が発表されました。簡単にいうと「最終出力段が半導体でシングル動作をさせたアンプ」です。これは、ぜひ参加してみたいと思いました。なぜならJLHを製作中にこの条件にぴったりの回路をネット上で見つけていたからです。Nelson Passという、PassLabのブランド名で有名な(だということを後で知りました)ハイエンドアンプの設計者が公開しているDIY AUDIOのページがあります。ここには、これまた有名な「Zen」アンプを中心に数々の製作例が紹介されています。この中で目を奪われたのは、「Son of Zen(禅の息子!)」というアンプで、なんと片チャンネルMOSFET2個と抵抗が10本足らずの構成です。JLHのシンプルさに驚いていた私にとってはまさに雷に打たれたようなショックでした。
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 回路は右図のようなものです。オリジナルは平衡回路になっていますが、ここでは入力の一端をGNDに落として非平衡回路にしています。ここですぐに差動のPPであるということに気が付くべきなのですが、(以前全段差動を作っているのだから)オリジナルの製作ではこの回路を"balanced single-ended"と呼んでいることもあって、まったく気づかず、結局、お寺大会ではレギュレーション違反になってしまいました。
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 まず、プロトタイプを片CHだけ作ってみました。板の上に20Wのセメント抵抗7本とヒートシンク付きMOSFET2個、それに5Vのスイッチング電源2個をのせただけのものです。MOSFETはオリジナルでは、IRのIRFP240(N型20A、200V)を使っていますが、本機では、手持ちであった三菱のFS22SM(22A、500V)を使いました。最初、平衡・非平衡回路がわからなくてハムが出ましたが、ちゃんと音が出ることが確認できました。
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 次に、本製作用にMOSFETの選別を行いました。選別法も紹介されているのですが、英語で説明されている内容がよくわからないので、VgsとIdを何点か計測してカーブの近いものを選びました。幸い手持ちの7個から、(たぶん)特性の近そうなものを4個選ぶことが出来ました
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 さていよいよ本製作です。とはいえ、お寺大会までには時間もお金もないのでありあわせで行きます。手ごろな使い古しのアルミシャーシが2個あったので電源部と増幅部に分けました。このアンプは回路は恐ろしく簡単ですが、電源は恐ろしくでかいものがいるようです。まともに出力20W級を作ると電源は500W!も要るようです。今回は1W程度を目標に、電源も手抜きで12V4AのACアダプタを2個使っています。
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 増幅部はごらんの通り、内部はセメント抵抗が並んでいるだけです。MOSFETは上面にヒートシンクが屋根になるように取り付けています。また、遊びのつもりで2SK1823をいっしょに取り付け、背面のスイッチで切り替えられるようにしてみました。残念ながら、DCオフセットの程度が違い、取り付けたものの、使わずじまいでしたが・・・。最後に多少色気を出すために側版を集成材で作りました。電源部と増幅部がちょうど重箱のように重ねられるようになっています。この色気のためか、幸運にもお寺大会ではデザイン部門で1位になりました。
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ZV6 Super Symmetryに改造
 Son of ZENにはZV6(ZEN Variations 6)、ZV7という改良版があり、特徴はPassの特許である「super Symmetry」と呼ばれるノイズや歪を打ち消すフィードバック機構が織り込まれていることです。そのメカニズムの詳細はPASSLABのHPを見ていただくとして、とにかく1000円ほど追加するだけで改造できるので早速やってみました。回路は右図のようにゲート・ドレイン間にフィードバック抵抗を追加したような形です。
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製作は小さな基板1枚分の仕事でした。ついでにセメント抵抗の発熱が大きくて基盤が変形していたためヒートシンクを抱かせ、発熱部に基板が接近しないようにして見ました。
音はどう変わったかはよくわかりません。今後は、電源部をもっとしっかりと作り変えていきたいと思っています。
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