ROOM1:真空管アンプを作る
PART I

はじめに

 中学時代にはじめてアンプを作って以来、約25年ぶりにアンプつくりを復活させる
きっかけは何だったのか・・・・すみません。正直忘れてしまいました。多分、高校の
同窓会のホ−ムページから偶然見つけた大先輩、ぺるけ師匠の「情熱の真空管」をたまに
見ていたからだと思います。 とにかく2002年4月、私は秋葉原に行っていました。
住宅ローンを背負ったばかりの私が貴重なおこずかいをはたいて衝動買いをしたのは
なんとGE製のVT-4C(211)でした。
 これですぐアンプを作るつもりなどはまったくありませんでした。何せプレート電圧は
1000v近くいるし、だいたいトランスはどーすんだ?買う金なんかあるわけないでしょ!
それでもこの球を買ったのは中学時代から憧れの球だったからだと思います。当時買った
ラジオ技術か電波科学の別冊「名パワー管アンプの製作」の記事の中でひときわ私をひき
つけた球が211でした。だるまみたいな300Bなんかより洗練された力強い形、そして
845ほどうすらでかいという感じがしなかったからだと思います。もうひとつ。今回出会
った211の製造年が、たまたま私が生まれた年と同じだったことも何かの縁?と感じたの
でした。
 211のアンプはすぐには無理でも10年計画ぐらいでお金をためて少しずつ作ればいいや
と思いつつもやっぱり何か作りたい!でも普通の球でもトランスだけで3〜4万かかって
しまう・・・と思っていたときにたどり着いたのが「手作り真空管アンプのページ」でした。
中でも「2万円握り締めて超3アンプを作る」は私のアンプに対する固定観念を吹き飛ばし
てしまいました。850円の出力トランス?2000円ちょっとの電源トランス?そんなんでもで
きるんだ!6月末、私は再び秋葉原に行っていました。2万円握り締めて・・・




お金をかけずにかっこいい?(自己満足)アンプを作る

2万円は私にとって貴重です。これだけの金額を使ってただアンプを作るだけではもったいない。完成までに、
できるだけ途中のプロセスも楽しまなければ・・・回路のことは初心者同然なので(勉強中です)まだいじる
のは無理。ということで外観に凝ってみることにしました。最近の球のアンプの中には従来通りの信号の
流れ重視でトランスや真空管の配置が決まった、機能美とでもいうようなデザインだけでなく、球をオブジェ
として扱ったような斬新で未来的とでもいうようなユニークなデザインも見受けられます。もちろんそんな
アンプは非常に高価で私にはとても手が出ません。そこで、自作アンプで少しでもそんなアンプの雰囲気を
もったものをできるだけお金をかけないで作ってみようと思いました。出来栄えはおそらく自己満足の域を
出ないでしょうが、ただアンプを作って音を聴くよりも十二分に楽しむことができました。ここではそんな
方針で作ったアンプを2つ紹介させていただきます。
 
−その1  6BM8超3アンプ(2万円握り締めタイプ+初段6AK5バージョンアッププランつき)
 かなりけちけちモードで買ったせいか、初段をFETから6AK5にバージョンアップ?する費用も含めて2万円
ちょっとですみました。6BM8はちょっと贅沢してペアで3000円でした。AMPEREXの赤い文字がなかなか
おしゃれです。6AK5は東芝製が1本800円でした。あとで150円で売っているところを見つけて涙。
シャーシサイズはアルミ製350x150x60です。かっこよくするために本当はボリュームのつまみは直径50mm
ぐらいのアルミ削りだしのやつがほしかったのですが、高いのでプラスチック製のつまみで我慢です。
スイッチ、パイロットランプ等もそこそこ満足できるものにしました。

 回路はオリジナルの山田さんの回路をほとんどそのまま使っています。6AK5バージョンは同じく「手作り
真空管アンプのページ」の宇多さんの回路です。違うところといえば、出力トランスを山田さんオリジナル
のまま片ch2個使っているところと、電源部のコンデンサを330μ450Vx3使っているところぐらいでしょうか。
シャーシ加工は電動ドリルをホームセンタでレンタルして(1日300円)やりました。ドリルの刃は100円ショ
ップでなんと5本組を売っていました。アルミ加工には十分です。
シャーシに塗装をしたかったのですが、やったことがないのと、プライマ、塗料、上塗りまでやるとかなり
費用がかかるのでやめました。替わりにヘアーライン加工に挑戦しましたが、みごとに失敗しました。
部品配置はオーソドックスな形です。入力から出力まですんなりと通っています。6BM8は見栄えを気にして、
正面にAMPEREXの文字が来るようにしました。配線・チェック・調整を終えて以外にすんなりと音が出ました。
感動の一瞬です!ペアで15000円のスピーカですが気持ちよく鳴ってくれます。

 
さて、いよいよ外観のお化粧です。今回のかっこいいところはトランスカバーと真空管の
プロテクタ?です。トランスカバーは金属製にこだわりました。まず迷ったのはカバーの形。
四角にするか円柱にするか・・・。しかしお金をかけない四角いカバーで思いついたのは紅茶の
缶ぐらいでした。これではちょっと華奢なので円柱形で行くことに決めました。真っ先に候補
に上がったものは四角と同様、缶詰の空いたものでした。しかし、上下のつば?がいまいち
かっこよくありません。そこで定規持参でうろついたのは今はやりの100円ショップです。
そこで見つけたのは出力トランス用にはお米の計量カップ、ステンレス製です。そして電源
トランスには植木鉢カバー、アルミ製です。ついでにドア用の取っ手を2組買いました。占めて
500円です。トランスカバーには10ml入りのホビー用塗料で色を塗ってみました。メタリック
レッドです。トランスは端子が剥き出しなので、絶縁のためにペットボトルを切り開いたもの
をカバーの内側に貼り付けました。


次は真空管のプロテクタです。これは適当な大きさのリングを探すのに苦労しました。
今回は100円ショップにもいいものはありませんでした。カーテンテールなんかも候補に
上がりましたが、木製しかないので断念。最後にホームセンタで見つけたのはキーホルダー
のリングです。3個で150円。支柱には手持ちであった8mmのステンレスボルト(1本50円
ぐらい?)を使い、これにエポキシ系接着剤でくっつけました。接着なので強度は弱く、
あまりプロテクタにはなっていません。ちょっとした飾りです。ボルト3本でリングを支持 
した方がもっと強度があったでしょう。こうしてドレスアップをしたのが下の写真です。
ボリュームとスイッチの間のプレートは昔ヨルダン旅行中に文房具屋で買ったもので、
アラビア語で「危険」(kha-Tar)と書かれています。
ということで名前はkha-Tar1号。このアンプにぴったりでしょ。

−その2  6CA7超3アンプ(kha-Tar2号)
 8月下旬、15年間使っているCDプレーヤが故障しました。 駆動部のベルトが切れてしまい、修理に出すと1万円ぐらい かかるというのでそんならと秋葉原にベルト探しに行きまし た。このときぴったりのベルトが150円ぐらいだったので 修理代が浮いたと気を良くして、4000円でスベトラーナの EL34(6CA7)を買ってしまいました。実は6CA7も中学以来 の大好きな球で、6L6や6GB8よりも何かスマートさを感じて いました。しかし、やはりトランスが高くつくという理由で アンプを作ったことはありませんでした。超3アンプでは 6CA7の製作例もたくさんあったのでそれを手本に、トランス 代(電源トランス)がたまるのを待って、kha-Tar1号を改造 することにしました。  6CA7のアンプでは以前「無線と実験」の海外のオーディオ ショウのレポートに紹介されていた米国製アンプのデザイン が印象的でした。トランスや真空管の配置はオーソドックスな 従来型ですが、4本の6CA7はそれぞれがガラスのチューブで覆 われており、さらにこれがライトアップされるらしいのです。 (白黒写真なのでよくわからない)今回はこれをやってみようと 構想を練り始めました。11月中旬、いよいよ買出しです。 回路はまたまた、宇多さんの回路を使わせていただきました。 前段の6U8Aは実は真空管オーディオフェアにいったときに1本 500円で手に入れてありました。(シーメンス製なのですが、手でこすると字が消えてしまう!本物か?) ベースは1号を改造しました。出力トランスは片ch2個使いで140mAいけそうなので結線だけ変えて良しとしました。 (1次5kパラ、2次4Ωオームシリーズで8Ω接続)よって、今回の大物は電源トランスだけです。6CA7は100mAぐらい 使いそうなのでDC200mAぐらいのトランスがほしかったのですが、予算の都合で春日無線変圧器のKmb240F(¥5600)を 使用しました。AC240mA、DC144mA程度です。あまり出力を上げない事として(家では上げられない)OKとしました。 あとは抵抗・コンデンサ類、そしてライトアップ用LED(¥150)です。色は迷わず青にしました。  いよいよ製作です。今回一番悩んだのはガラスのチューブです。まずガラスをあきらめました。昔、 ガラス瓶を切断する方法を科学実験の図鑑で見たような気がするのですが(切断面に新聞紙を巻いて バーナーであぶり水につけて・・・なんていう感じ)はっきり覚えておらず、かといって売っているのも 見たことないし・・・。次の候補はもちろんプラスチック。アクリルチューブなら東急ハンズである だろうな、でも高いだろうな・・・と、そこでひらめいたのがこれです。100円ショップのしょう油注し!  材質はポリスチレン、耐熱性は70度です。LEDの光が乱反射するのを期待してわざと すりガラス状のものを選びました。ヒータの光を殺さないよう、6CA7の下部だけを囲む ように3cmほどの高さにし、また、キャップをつけるねじ部を使ってシャーシに固定する ようにここを残し、金鋸で切断しました。シャーシ側は追加工です。トランスの穴、 6AK5(MT7ピン)から6U8A(MT9ピン)用の穴に変更、6BM8(MT9ピン)から6CA7(GT) への変更がメインです。今回6CA7のソケット穴はプラスチックリングの取り付けと放熱 のことを考えてシャーシ上面から少し下げた沈み型の取り付けとしました。ちょうどBS アンテナの固定用のアルミプレート(150x70xt5ぐらい)が手元にあったのでこれを 流用しました。LEDはヒータ回路から取っています。何かノイズの原因になるかなと素人 なりに心配しましたが大丈夫でした。 今回のもうひとつの目玉はシャーシの両サイドに設けた木製の側板です。これは kha-Tar1号のときにヘアーライン加工で失敗したので側面は何もしないでおいてあり、 それがなんとなくみすぼらしいと思い、つけることにしました。当初材木屋さんで手に 入る「ご自由にお持ちください」の端材を考えましたが仕上げのことを考えると費用が かかりそうなのでやめました。代わりに選んだのはまたも100円ショップです。ゴムの木 でできている小さなまな板を1枚買ってそれを半分に切って作りました。表面はつるつる なので切り口をかんな(実は鰹節削り器)とやすりで仕上げるだけでそこそこ良いものに なりました。配線・チェックを終えてスイッチON。kha-Tar1号の時よりもさらに感動です。 思い描いていた以上にLEDが6CA7をライトアップしてくれます。明かりを消して見ると ヒータの明かりとも、いい具合にバランスしています。もちろん音のほうも満足のいく ものでした。
−おまけ 使ってみたい素材  kha-Tar1号、2号と製作して100円ショップ、ホームセンタ、スーパーなどを何度もうろつきました。 そこにはアンプのドレスアップに使えそうなものがいろいろとありました。その一例をあげると、 キッチン用品:ステンレス製の物が豊富にあって魅力的。まな板立てや洗ったお皿を立てておくものは 真空管のプロテクタになりそう。また箸やスプーンを立てておくメッシュの籠もプロテクタ向き。100円 ショップのまな板は、木製・プラスチック製などさまざまあり、ブレッドボードアンプや今回のように 側板によさそう。茶漉しの網や流しの網はちょっと弱くて形が整っていないがこれもカバーに使えそう。 キッチン用品は非常に応用範囲が広いと思いました。シンプルなステンレス製の調味料入れやプロ用の 調理器はトランスカバー向き。合羽橋に行ったらもっといろいろと良いものが見つかりそうです。ただし 安くできるかどうかは疑問。 文房具:鉛筆立て:メッシュ製や金属製は大きな真空管のプロテクタによさそう。211に使いたい。アルミ製 の本立ても使えそう。 その他:無印良品−シンプルなデザインのステンレス製品やアクリル製品が以外に安くあった。応用範囲 広そう。 −おまけ 今後の予定  家の中を見回してみると、おしゃれなアンプに使えそうなものがいくつか目にとまりました。しかし 今のところそれらは本来の機能を果たしているので、もしつかえなくなったら、捨てないでアンプに 使ってみようと思っています。テーマは「廃物利用でかっこいい?アンプを作る」です。ただしいつ廃物 になるかは未定なのでいつできるやら・・・ひょっとしたら街中を積極的にさがすかも。 PART II へ行く

ご注意!

真空管アンプは高圧電流を扱います。感電、火災等の危険が考えられます。。
読者がここに記載された情報を実際に運用した際に発生した事故、傷害、損害等
をに関して、 著者は一切の責任を負いません。 読者の自己責任で利用してください。
適切な対策を講じて、事故のないよう十分配慮して下さい 



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