PART IV   邪道へ・・・・再び

     − 廃物利用でかっこいい?アンプを作る(PART II 続編)

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 ゴールデンウイーク中、帰省した妻の実家でとうとう見つけました。つるぴか!・・・からはほど遠いオーブントースター。実はこれでもまだ現役でした。たまたま物置にこれよりも程度が良く、コンセントのプラグがないだけで放置されていた別のオーブントースターがあったので、それを修理して(といってもプラグをつけるだけですが)代わりにこれをもらってきました。
 しかしまあ、なんとも哀れな姿です。ガスレンジの近くで使われていたので天板にはなべをのっけられていた跡が残り、調理ではねた油にまみれ、その汚れのせいで塗装がふやけたような状態になっています。さらに全体的に長年の汚れが熱で焦げ、焼きついたような状態です。電源コードは一部芯線が露出しており、漏電寸前でした。


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  あとでメーカに問い合わせてわかったことですが、このオーブントースター、なんと1976年製でした。つまり、妻が中学生のころから約27年間休まず働きつづけてきたことになります。
 さて、肝心のつるぴか度はどうかというと、残念ながら天板はオレンジの塗装のようです。側板は黒のフェノール樹脂製で、つるぴかは扉の部分と上下のモール部、内部の網ぐらいです。少しがっかりですが、彼に第二のすばらしい?人生を送ってもらうことにしました。

     −磨く、みがく、ミガク

 まずは全体油汚れや焦げ付きを取り除くことから始めます。油汚れはキッチンの油汚れ用洗剤を使いました。下に敷いた新聞紙がすぐにまっ茶色に変わるほどの汚れです。底板には長年のパンくずが堆積し、さびと焦げでぼろぼろになっており、再利用は無理なようです。焦げやさびはまず紙やすりでこすったり、カッターの刃で削ぎ落とすように取りました。ステンレス製のつるぴか部は同様の作業の後、おなじみの「ピカール」で磨き倒しました。

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 この「ピカール」は、あるホームページによると、見かけによらず大変優れもので、磨いているうちに研磨剤自身がつぶれて粒径が小さくなっていき、自然に仕上げ度が上がっていくそうです。かなり気合を入れて磨いたのですが、なかなか満足行くまでの鏡面仕上げは得られませんでした。そこまでの仕上げはバフ研磨が必要なようですが、グラインダ類は持っていません。それならばと扇風機の回転軸に布を巻いてやってみましたが、トルクも回転数も足りないのでだめでした。というわけで仕上げ磨きはここまでで良しとしました。それでも我が家に着いたときと較べると見違えるように若返りました。天板および本体内部はスピーカの塗装で使った黒の198円ラッカーで仕上げました。




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     −構想を練る

  PART IIでのオーブントースターアンプはバーチャルゆえ、真空管には松下製6CA7を使い、トランス類も贅沢三昧でした。しかし現実世界では悲しいかな、まず予算が制約条件となり当然無理なことになります。オーブントースターのガラス窓から赤々とヒータの灯る堂々とした6CA7はお預けです。「Kha-Tar1」で使った6BM8と6AK5、そして電源トランス、ヒータトランスなどの大物部品が残っているので出力トランスと多少の部品を購入するだけですむ宇多さんの回路(6BM8STC)を再び使わせていただくことにしました。
 次に「邪道」アンプで一番大切ともいえる、外観のデザインです。かっこ良く、しかも遊び心をもったアンプということで次のような方針を立てました。

    1.できるだけ本来の状態を保つこと
    2.演奏中も扉が開けられること
    3.タイマースイッチのつまみは電源スイッチと、ボリュームを兼ねること
    4.さらに、電源OFF時には「チン」と音がすること
    5.ヒータ部を残してライトアップに利用すること
    6.手元にあるものでできるだけ間に合わせること


     −製作

  @ 真空管周り
  真空管周りのレイアウトですが、方針1に従って網をそのまま残し、この上に配置します。網は上下方向に波のようにでこぼこしているので設置部分をペンチで平らにし、上下からアルミの板ではさむような形で固定します。この板にソケットを取り付けます。網全体を一枚のプリント基板と見立てて他の部品(抵抗、コンデンサ等)を配置します。網の上に配置するために、部品取りしたジャンク基板の銅箔部を剥ぎ取ったものを使っています。一応1点アースを守るため、アースの母線を網から浮かせてあります。6BM8(P)のカソード用コンデンサが6BM8のちょうど真後ろに来てしまうので熱対策としてアルミプレートを曲げたものを「ついたて」として取り付けました。

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  A ボリュームと電源スイッチ
  今回最も苦労したのがここです。もともとついていたタイマー兼スイッチは、下の写真のように「つまみ→軸→タイマー部→スイッチ兼チン(ベル)部」という構成なのでこのままではボリュームを駆動するための軸がベルに遮られ取り出せません。さらに、軸奥行き方向にはトランスが来るために軸はあまり延長できません。そこで軸に平行にボリューム軸を配置し、ギア駆動にすることにし、スイッチとボリュームの切り替えは間欠ギアを使いました。
  まず「つまみ→軸→スイッチ兼チン(ベル)部→間欠ギア」と構成を変更するためにタイマー部を取り除き、軸をやすりで加工しました。ボリュームの固定とギアボックスはまたジャンク基板を使って作りました。肝心のギアですが、精度が必要なため真鍮のギアでも使いたかったのですが、非常に高価なので手持ちにある、子供のころ散々遊んだ「fischertechnik」というレゴのドイツ版のようなブロックのギアを使いました。
  最後まで悩まされたのはこの状態でいかにスイッチオフ時に「チン」と言わせるかでした。スペース的に非常に厳しいので結局ベルを半分の厚みに切断し、写真のような配置でハンマーがあたるようにしました。ベルを切断したおかげで「チン」の音程がかなり高めになりました。
 ここまできて大きなミスをしていることに気が付きました。ごらんのようにL、Rのボリュームを間欠ギアの回転に対してお互い逆方向に回転するようにしたため、A型のボリュームでは抵抗値が大きく異なるのです。てっきり回転角に対して中点で対称だと勘違いしていました。急遽ギアをひとつ増やし、L、Rとも同方向に回転するように修正しました。

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 B ライトアップ
  Kha-Tar2でライトアップに使用した青色ダイオードの予備が2個あったのでこれを使いました。当初、ヒータニクロム線を保護している白のガラス?管の中でヒータの替わりにLEDを点灯すれば良いと思ったのですが、意外に光の透過量が少なくて暗すぎました。そこでガラス管は外し、替わりにアクリル棒を使いました。直径10mm程度のアクリル棒が最適なのですが、値段が張るので直径3mmのものを2本買い(200円)、必要な長さに切ったものを7本束ねました。これを両側からLEDで光らせます。アクリル棒の半径方向に効率良く光らせるには、中で乱反射できるよう気泡が入ったものの方が良いようですが、手に入らなかったのでこれで良しとしました。ヒータ部は網に対して上下2箇所ありますが、上部は真空管のヒータとけんかしそうなので下部だけにしました。

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 C 電源部、出力トランス
  電源トランス、ヒータトランス、そしてフィルタ用電解コンデンサ3個等がちょうどボリューム兼スイッチ部の後ろ側に収まりました。ライトアップ用LEDの電源もヒータトランスから取っています。出力トランスはおなじみT−850の7kを片チャンネル2個使いで使用しています。これらは下部ライトアップ部の後ろに1列に4個並べました。内部を黒で塗装してあるのでトランスも黒に塗ってしまいました。

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     − Kha-Tar4号 出来あがりは

 各部の配線そして調整を終えて出来たものが下の写真です。つるぴかしているでしょ。

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 扉を開けると

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 うしろ姿は

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 音はスピーカが替わったせいもあるでしょうが、非常に元気な音がするようです。新しい人生を迎えた彼の喜びの声でしょうか?
 問題点もちょっとあります。それはスイッチからボリュームに切り替わるときに、ギアの噛み合わせがたまに悪くなるということです。まあ、あまり精度の期待できないギアと加工なので仕方がありません。対策として側板に穴をあけ、そこから棒でギアを突っついて噛み合わせを修正しています。

 追加:盆休み中に”Kha-Tar 4 Amplifier"とアラビア語のインレタで入れ、クリアラッカーで上塗りしました。

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     −おまけ 

 100円ショップでいいものを見つけました。大きさは3種類ほどあります。

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 穴をあけてUVソケットをつければ

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     −今後の予定 

 今度こそ王道目指して、自力設計で・・・




ご注意!

真空管アンプは高圧電流を扱います。感電、火災等の危険が考えられます。。
読者がここに記載された情報を実際に運用した際に発生した事故、傷害、損害等
をに関して、 著者は一切の責任を負いません。 読者の自己責任で利用してください。
適切な対策を講じて、事故のないよう十分配慮して下さい 

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